文藝

ブンブン分泌業

を読む。途中までよかったんだけどね。主人公の彼氏の最後の扱いは(中原昌也的な意味で)含羞の欠如がないと書けないのでは、と思う。父が父の場所に再配置されることによって押し出されてしまうんだけど、そうした「物語」に抵抗する「小説」が読みたかっ…

さよならアメリカ、さよならニッポン

主人公にアルマジロを預ける友人はアメリカへ向かい、そのアルマジロはニホンと名づけられる。(ミツオビアルマジロなのに二本しか帯がないから)。前作で紙袋に唐突に書き込まれた文字の変奏がここでも。...っていきたかったんだけど「圏外」の携帯電話で召…

パースペクティブ

予定通り途方に暮れて、人生論を飲みながら読む。 ところが!ちょっと下の人たちから、まるで団塊の世代と同じようにビートルズからポップスに入り、他のバンドにいかずにそのままビートルズを聴きつづけた人たちが登場する。あるいは一方でもっとずっと先鋭…

追いつき追い越す

ともに読了。えっと、各エッセイがどちらに収録されていたかゴッチャになるのはご愛嬌。(けっこうかぶっている)書物の物質感について(とみなせる)のエッセイがどちらにも収録されている。書物の物質感って、どんなにWebでのテクスト閲覧が便利になっても…

読了が重なる

3冊読了する。 キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) まず、古川日出男。根拠もなんもないけど、この人の小説には、猫が天敵である鼠の勢いに溢れているような気がする。書かれるそばから読んでいきたい。で、カズオ・イシグロ。こ…

飲酒のあいまにこんなことを考えていた

散歩のあいまにこんなことを考えていたを飲みながら読みはじめる。気になる記述を拾い上げてみる。 ところが、どういう成り行きか、わたしは二年ほど前に、突然スモーカーになってしまったのである。 そもそもの始まりは、たぶん小説というものを書き出した…

引き続き

『わたしたちが孤児だったころ』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読む。まだ入荷してないけど、カズオ・イシグロの新刊『わたしを離さないで』(早川書房)がまもなく出そうだ。ということは、バラードの『楽園への疾走』(東京創元社)も出るわけで。天…

再読二件

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) を読む。あ、『ライ麦』は野崎孝訳と原著(僕が英語で読んだ数少ない小説のうちの一つ)を読んで、春樹訳は読んでなかった。やれやれ。ちなみに『ライ麦畑の捕手』という直球過ぎるタイトルの…

うーん

読了。『一千一秒の日々』を読んだ時も気になったけど、会話文の白々しさというかせりふ然としたところがどうしても気になる。これわざとやっているのかしら。主人公の(形を変えた勝利)を際立たせるために、この物語の構造が一人の女の子を「強姦され自殺…

世界の果ての中二

読了。地理的想像力が僕には不足しているので、舞台になったトーネダーレン地方がどういうところか、薄ぼんやりとしか分からないけど(独特なフィンランド語を話す地域らしい)国としてのフィンランドとの差異とか、南部のストックホルム周辺との差異とかは…

あかんかった

権現の踊り子 (講談社文庫)読了。この短編集って『告白』の「あかんかった」への助走だったのだなと再認識。逆水戸とパンク侍とかも。「私はほかの人とは違う」という自意識の球体の破裂っぷりを笑いつつ、即座に返り血を浴びる。この返り血すら気持ちいいの…

町蔵再読

『権現の踊り子』のうち最初の3篇「鶴の壺」「矢細君のストーン」「工夫の減さん」を読む。

飲酒の友

本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ (Part 2)読了。90年〜93年に書いた書評を中心に編まれたこの本、『日日雑録』に混ざりこんでいたとしても全然違和感がない。大岡昇平も中上健次も後藤明生も山田風太郎も、全員死んでいるのに。この本で二回取り…

2作目問題

『文藝』夏号読了。まず「浮世でランチ」山崎ナオコーラ 松浦寿輝の「とんま発言」も記憶に新しい の2作目。『人のセックスを笑うな』は「とんま」とまでは思わなかったけど、あまり出来は良くなかったのも事実。でこの2作目、僕は『中二』的なものに点が…

源ちゃんをめぐってイロイロ

『文藝』高橋源一郎特集。内田樹との対談は、 での対談もいっしょに読めばいい。で、この68年的な「他者と死者」をめぐる対談に説得されつつも、石川忠司の『「ニッポンの小説」注釈』によって、その「他者と死者」を思いっきり脱臼させるとよい。可能性はこ…

スローモーション

獅子文六の『ちんちん電車』(河出文庫)読了。こりゃ面白いや。僕も都電じゃないけど、下高井戸に住んでたんで、世田谷線にはよく乗ったな。三茶に行ったり、豪徳寺で小田急に乗り換えたり。始発なんで絶対座れるのに、乗客の年齢層の高さに負けてしまい、…

うららかな昼下がりの出来事

『血は冷たく流れる』読了。御他聞に漏れずアリス好きなので「うららかな昼下がりの出来事」が楽しめた。(「なので」、「楽しめた」というのもつながりがあるようでないような気がしないでもないが、それではどう接続させたらよいのかと言われれば上手く答…

血は冷たく流れる

ロバート・ブロックの『血は冷たく流れる』を合間に少しずつ読む。『あの豪勢な墓を掘れ!』がいい。

反則家族

今月の文芸誌は『文藝』しか買ってなくて、しかも高橋源一郎×橋本麻里対談をちらっとしか読んでいない。親子対談なんて反則だよー。ま、スキをみておいおい読んでいこう。文芸三誌って同月の各誌に載ってるものを、自分好みに編集して一冊に纏めることができ…

馬鹿の二人連れ

いやーこれよかったなあ。 スピード感とか何気にハードボイルドな感じとか。馬鹿の二人連れってやっぱり良いです。というよりもむしろ、これが世に言うカップリングってやつかも知れない。各章ごとに付されている下村富美のイラストもいいしね。行天さんにハ…

現代人は愛しうるか

ロレンスかよ、大きく出たな。いや読んだのは なんだけど。もう「まっとうな愛」を書くにはファンタジーっていう形式しかないんじゃないのって気がする。こういう素敵な物語を生身の人間でやれるのかなあ、とあれこれ思案すると、こんなのがあったじゃない。…

そろそろくる

上で触れた金縛りは、実は眠るときに「あ、これはくるな」ってわかる。で案の定くる。そんな感じなのか(いや違うだろう)。 を読む。斎藤美奈子だったか辛酸なめ子が(あるいは別人かも。ちょっと原典が思い出せない)生理を「あればあったで面倒くさいし、…

にょっ記

友人に借りていた『にょっ記』を読む。図書館よりは友人の方が「負債」感は重いので(これは個人差があると思うけど)。僕はこれが好き バスの中でおばさんたちが喋っている 「ああ、あの子たちにうちのシイタケを食べさせたいねえ」 「誰よ。あの子たちって…

持っていってよかった。

絶対「女たちは二度遊ぶ」をすぐに読み終えてしまうだろうと思い、 も携帯していったんだけど、予想は的中。で休憩中と帰りの電車で読む。(行きはゆっくりと各駅停車に乗っているのですぐに1冊読み終えることができる。帰りは早く帰りたいので急行を利用し…

短編集

を行きの電車の中で読了。短編集なのでいい短編と悪い短編がある。まずは悪い短編。「自己破産の女」 まず それがある日、たしか池袋の北口で飲んでいたとき、ヘンな女に引っかかって、たまたま手持ちがなく、銀行はしまっているし、一緒にいた友人も持って…

にょっ記

友人とひょんなことからムーミンの話になって、それではということでにょっ記作者: 穂村弘出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/03/13メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 78回この商品を含むブログ (114件) を見るを貸してもらう。読みたかったけど買っ…

カンバセーション・ピース読了

読み終わったものの、また円環をなして冒頭から読み始めたくなる。僕たちの「大論理学」。数珠つなぎ的読書の実践家としては、彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄 (朝日文庫)作者: 金井美恵子出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2002/09メディア…

続カンバセーション・ピース

昨日と同じように休憩や帰りの電車の中で読み進めていって350ページまですすむ。

大澤真幸の三幅対

表紙の恥ずかしさにもめげず を電車の中で読む。意地でも書店のカバーはかけないで表紙を露出したまま。平野啓一郎の作品はほぼ読んでいるのだけれど、いまだに何をしたいのかよく分からない感じがして、「顔のない裸体たち」はどうなんだろうか、と興味をも…

森中

休憩と仕事帰りの電車の中で「カンバセーション・ピース」を再読。150ページほど進む。もう森中の発言がいちいち中原昌也の声色でしか読めなくなる。たとえば 「じゃあ、入れ墨すると不安が消えたり、不眠症が治ったりするんですか。そんなの全然関係ないじ…