洋館出してもオーケーなのは

ミーナの行進
読了。19世紀英国小説から階級問題を抜いた感じできわめて読みやすく、面白い。というか、主人公と預けられる伯父の家には明らかに階級差があるんだけど、それが葛藤を生まないように書かれているので、恐らくそれが読みやすさに繋がってるのではないかと。この小説は1972年の一年間を描いているのだけど、1972といえば
「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 一九七二 (文春文庫)
『ミーナの行進』では連合赤軍は出てこないけど、代わりにミュンヘン・オリンピックのアラブ・ゲリラは出てくる。ミーナの祖母の出自も含めて、小川洋子がいかにアンネ・フランクが好きか思い知らされる。1972年という設定も、浮世離れした洋館を舞台にするにはギリギリのところで、そのギリギリさが上手い。伯母さんが誤植を見つけるのが趣味っていうのもね。肩肘張らずに読むのが正しい読み方かと。ここには、
vanity
のような闘争はないけれども。