反撃は届くか

『リベラルからの反撃』読了。僕は「クズどものクズどもによるクズどものための政治」って言う「来るべき民主主義」に親和的なんだけど、そういう言説がある程度人々の耳を驚かせなくなることで、この本の主流をなす中道寄りに世の趨勢がシフトすればそれはそれでよし、という(悪い?)プラグマティストでもある。(わかりやすく言うと、「ノマド」とか「戦争機械」って言いつつ、日本の政治がギデンズ的な第三の道に進むのならそれでいいや、ってこと)。そういう不誠実な態度はこの本に収録されている井上達夫からすると許せない態度であるだろうね。(しかも批判されるであろう僕にしてからが、井上達夫の「9条削除論ー憲法論議の欺瞞を断つ」のいつもながらの鋭利な文章に「胸がすいちゃっている」のだから始末に終えない)。あ、そうそうその井上達夫論文の後記にナカニシヤ出版から共著『公共性の法哲学』が刊行準備中とある。共著というからには他に誰が書くんだろうか。気になる。
味わい深かったのが『政治家は「勇ましい姿」より「ちょっと待てよ」の気概を』と題された座談会で、久間章生×太田昭弘×仙谷由人という構成。「保守主義とは大人の知恵」というが、まさにそれで、いやしくも「保守」を名乗るならばこれぐらいの気構えは持って欲しい。彼らは、昨今の右傾化を逸脱とみなし、それに対する揺り戻しは来るだろうと見ているが、しかしそれは若干希望も込みでの観測ではないかとも思える。無論、この右傾化が一過性のものであって欲しいが。
最後に佐伯啓思について一言。戦後日本における、アメリカに対するねじれた構造の指摘は(いつも)肯かせられることも多いが、それをアメリカニズムと見て、リベラルからリバタリアズムまで一纏めにして斬って捨てるのは粗雑に過ぎると思う。それでは何が残るのか、いつも読んでいて分からなくなる。日本的なるものを称揚するにしても、必ずヨーロッパを迂回してという点も気になる。ポモ的言説の理解も途中までは「なるほど」と思わせつつもいつも最後で梯子を外されるような気がする。それは、
テロの社会学
大澤真幸との対談で触れられている、「親子モデル」と「恋愛モデル」の差から来るのかも知れない。もうすぐ出る
学問の力  NTT出版ライブラリーレゾナント023
もなんだかんだ言って買っちゃうかも知れないけど。


ブックガイド書いてる五野井郁夫って同い年なのか。