読了本二つ

サルトル』読了。評伝なので気楽に読める。というかすでに知っていることが多い。(とは言えそれはサルトルの評伝は割りとよく読んでいるということであり、実はサルトル自身の著作ってあんまり読んでないんだよな)。知っていることが多いだろうということはうすうす読む前から気付いていたけど、これは「以前別の本で読んだなあ」という確認を当該の本を読むことで確認するというなんとも倒錯的な事態なんだが、僕はこれをよくやってしまう。完全に未知の世界が開けてしまいそうな読書に対する恐れみたいなものもある。サルトルが己を孤児としてあらわすことをうけての、著者のサルトルの父方の系譜探りがスリリングで良い。
『パリ感覚』読了。68年の意義を認めつつ、68年以前への郷愁が行間から漂っている。そしてそのように書ける立場とは、僕がもう絶対占めることのできない立場でもある。当たり前のことを確認する。85年に出版された本だが、随所にルペンの名が出ていて、後のフランス暴動に至る諸矛盾というのはすでにこの時期から見やすい現象としてあらわれていたことを知る。
サルトル (文庫クセジュ)パリ感覚 (岩波現代文庫)