むしろ老人の愚行が聞きたい

1.『カワハギの肝』
読み終える。ツボにはまった部分はほぼ解説で高遠弘美が拾い上げている。そのシンクロ具合にちょっとびっくり。僕は(もうすぐ来る)トマトの季節が待ち遠しいなあ、うちのトマトは甘いんだよ。あと杉浦明平は柑橘類をよく取りあげているが、そのなかでほとんど言及のないはっさくが僕は好きだ。あの一口目の酸っぱさの次にやってくる甘さときたら。などと思わず自分の嗜好をついつい語りたくなるのもこの本の魅力である。
2.『地中海 人と町の肖像』
読了。御大のこの小著はどこを読んでも「イイ」けど、特にコルドバの章:イブン・ルシュドとマイモニデスは、(いつになるかは分からないけど)もっと勉強したいという気にさせる。(スピノザをにらみつつ、ね)。この「もっと勉強したい」気にさせるのが、新書が新書たる醍醐味ではなかろうか。新書は新書で完結してはいけないんですよ。
3.『昭和のまぼろし
もっとこんなおじいちゃんが多ければ日本は別な国になれたのに!とさえ思わせる痛快さ。笑いと怒り(それだけに尽きるのではない)を短いコラムで、しかもコンスタントに出していく技を堪能するのみ。「むしろ老人の愚行が聞きたい」んだ、僕は。(矢作俊彦調で)
カワハギの肝 (光文社文庫)地中海―人と町の肖像 (岩波新書)昭和のまぼろし―本音を申せば