ものすごく寂しい

インディアナ、インディアナ
読了。わりと複雑な構成なので読めたか?と問われると言いよどんでしまうのだが、柴田元幸の訳者あとがきより、

切れぎれの回想、現在のノアの心理、オーパルからの手紙、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話等等が一見脈絡なく並べられ、事実関係はにわかには見えてこない。だがそれは少しも問題ではない。事実は見えなくても、ノアの胸に満ちる強い喪失感は、一ページ目からはっきり伝わってくる。その静かな哀しみが、ノアの父親ヴァージルのやたらと衒学的な物言いなどから浮かび上がる淡いユーモアと絶妙に混じりあい、それらすべてが、文章教室的規範から逸脱することを恐れない自在の文章で語られることによって、この作品を、昨今の小説には稀な、とても美しい小説にしている。

つけくわえることがもうないっす。しかしこんなに寂しさを感じさせる(それでいて心地いい)小説ってあんまりない。