理念と現実の終わりなきすり合わせ

応用倫理学の考え方―生命・環境・経営倫理と社会問題
読了。法と倫理の関係について啓発されるところが多い。未来世代への責任について、気になった部分の引用(メモ)

中間規定としての倫理水準
(1)未来世代としての現世代
(前略)この理念には、未来の人々の倫理観を予測して方針を決めること自体が、非倫理的な行為になるところに、難しさがある。われわれが他人の意見を聞かないまま、勝手にその意志を推測して、それを前提に判断し、行動するのが許されないのと同じことだ。同じ世代同士であれば意見を聞けばよいのだが、未来世代だとそれは不可能である。
このように未来世代への責任を理念とすると、現実との間にどのように中間的規定を定めればよいのだろうか。われわれの世代は、過去の人からすれば、未来世代だ。環境問題に関する世代間の倫理について、われわれがはっきり述べることができるのは、現世代と未来世代との関係ではなく、過去の世代と未来世代としての現世代という視点しかない。過去の世代も環境破壊を行った。その影響を今の世代は受けている。それについてわれわれはさまざまな感じを持っている。未来世代がどう感じるかを予測して行動することは倫理に反するので、今の世代が過去の環境破壊をどう考えているかだけが、世代間倫理の基準になることができるはずなのである。したがって、過去の世代から見れば未来世代である現代人の倫理観を、この問題についての現世代の中間的な倫理規定にできるのではないだろうか。(後略)

僕自身もうちょっと詰めたい。