古典になる、ということ

elieli2006-02-19

戦後思想の名著50を読み始める。分厚いが、なにせ50冊もの
「名著」を紹介するわけで、個別の論考は15ページ平均といったところ。
ここに、悩ましい問題が生じる訳で、論じられる対象が馴染みのものならば、
「そんなこと知ってるよ」となるし、未読で、「これを気に入門しよう」
と思うなら、消化不良を起こしかねない。限られた紙幅で、いかに上手く
まとめ上げられるか。ここが担当者の腕の見せ所で、「きけわだつみのこえ」
(担当:野上元)が、学徒の手記に「古典」への言及が、教養主義的メディア
によって可能になった事と、その「古典」への言及によって「きけわだつみのこえ」
自体が、「古典」と見做されるにいたる構造を指摘していて、手際が良かったと思う。