某月某日労働実話

ある日のこと、仕事場で年少の同僚に
「(そこにある)ガムテープを取って」と頼み(段ボール補強のため)、しばらくして
「セロハンテープを取って」と頼んだ。(そしてその両方とも取ってくれたのは言うまでも無い)。
二つ目の頼み事をした直後に、何をトチ狂ったのか、
「ここは形式的に三段オチにしなければ美しくない!」
と思い立ち(もちろんこの特定のダジャレが美しくないのは言うまでもなく、そもそもダジャレというジャンルそれ自体が美しくない、にもかかわらず)思わず
「メタルテープ取って」(注:録ってともかけてある、一応)
と言ってみた。
僕が年長で勤続年数も長いと言うだけで、年少の友人にクソツマラナイダジャレの聞き手であることを強いるのは、安冨さん的にはハラスメントだよなぁ、でもやるけどね... とか思っていると件の年少の友人はポカンとしている。僕の想定では「ツマンナイッすよ」という反応が返ってくるはずなのだが、彼の口から出てきた言葉は、
「メタルテープってなんすか?」
であった。
年少と言っても十も離れているわけでもないのに... もしやと思い、他の年下の同僚にメタルテープを知っているか尋ねてみたところ...
そう、誰もメタルテープというモノを知らなかったのであります。(というかもう何年かすりゃMDすら知らない人たちが続々と... でもよくよく考えりゃあオープンリールなんて使ったことのない僕もオープンリールの存在自体は知っているわけで、たとえメタルテープを使ってなかったにしてもメタルテープというものがあった、ということは知っといてほしかった)



三段オチで「ノーマル」や「ハイポジ」ではなく「メタル」を選んだのは、
「そんな上等なテープを使って、そんなクダラナイ曲録ってんじゃねぇよ」(では何がメタルテープを使うに値するのだろうか?)、という「メタルテープ」の使われ方にまつわるコッケイ味があった(と僕が思い込んでいた)からで、そのコッケイさも、もとの「メタルテープ」が知られてない以上、どこを漂っていくのだろうか。