休日の夜は長い

1.『読書の運命』
「飲みながら読む本」に決めてたんだけど、面白かったので半分過ぎたあたりから一気にシラフで読了する。『アムル将軍と「針の眼」の文献学』の走査に舌を巻く。それと『イスラーム世界はなぜ没落したか?』バーナード・ルイスの書評をめぐるアレコレとか。イスラームに関して(というか何に関してもだけど)素人の僕には即断するのが難しいや。近代化論をめぐっては、
2.『日本の個人主義
を次に読んだ。大塚史学を軸に読み解く戦後思想における「自律」観の変遷。他者啓蒙が呼びこむパターナリズムと動員。その隙間を縫うのが「コミュニケーション行為」による公共圏だ、ととりあえず乱暴にまとめてみる。ポモ(って略すとなんだかポモドーロみたいだ)言説が『主体の死』を宣告した、というのはまあその通りなんだけど、『主体の死』以降も主体・のようなものは依然として残る。その想定はポモの人たちにも共有されているのではないか。印象ですけどね。そしてそれは小田中氏の改定バージョン『個人の自律』からそう隔たったところにあるわけではないとも思う。読んでいて気になった点を少々。『ネオリベ』批判派がしばしば『コミュニタリアニズム』にゆきつく、というのは若干ショート・サーキットが過ぎるように思う。それらの議論における共同体は実体的な共同体というよりは、コミューンなものなき者たちのコミュニティっていう線だし(それをも『コミュニタリアニズム』というのであれば、それはそれで仕方がない)、リバタリアニズムも批判的に摂取(懐かしい言葉!)しているんじゃない?あと「啓蒙されたがらない人たち」、「啓蒙の外」の問題については『責任と自由』を思い出したりね。(ってものすごい断片的な感想だな。自律・啓蒙については引き続き考えていく)
3.『夏休み』
文庫で再読。風通しいいよね。(そんだけ?)
4.『ずっと』
底が抜けた出来事が描かれているが、登場人物は必ずしも底が抜けていない、というか古典的なんだよな。『火薬と愛の星』もそんなだったような。(ちょっと細部を忘れているけどね)
5.『ロコ!思うままに』
オトコノコ生き延び小説として表題作が一番良かった。クダラネェー(酷評じゃないよ)と思いつつ大笑いしたのが『怪人明智文代』。今日行ったまさに同じ図書館で、小学校の時にポプラ社版の江戸川乱歩シリーズを読破したのを思い出す。(『マガーク探偵団』シリーズも好きだった。)今日も児童書コーナーを見に行ったんだけど、乱歩ずいぶん減らされているようです。これじゃイカン。ガキは乱歩を読まないと。
6.『大学生の論文執筆法』
論文なんて書かないまま大学を辞めたし今後も書かないだろうけど、こういう本は読む。執筆法の伝授というより、執筆以前の心構えに多くページが割かれている気が。石原千秋の教育熱心には頭が下がるが、それと『ネオリベ』的大学再編って思っている以上に親和的な気もしないではない。二つがかっちり噛みあうと...なんて考える。メモ:小森陽一への言及と、若干イヤミな『論理哲学論考』の使い方。(まあ、このおかげで積読のままの『論理哲学論考を読む』野矢茂樹をそろそろ読まないと、という気になったんだけど)それにフリーへのアンビヴァレンツとかね。
書物の運命日本の個人主義 (ちくま新書)夏休み (河出文庫)ずっとロコ! 思うままに大学生の論文執筆法 (ちくま新書)