菊地成孔かく語りき

ユリイカを読み始める。山下洋輔との対談から、

菊地:もう十年ぐらい前かな。国書刊行会から「コレージュ・ド・パタフィジックのクロニクルを出すから、主要執筆陣の一人として加わって欲しい」と依頼が来たんですよ。ボリス・ヴィアンアルフレッド・ジャリがやってた、冗談学会みたいなモンなんですけど。僕、嫌いじゃないんで(笑)やりますって言ったの。そしたら「菊池さんには全冷中について書いて欲しい」と(笑)「いや、僕かぁ「冷し中華」については本で得た知識しかないんですよ」と。関係者だと思われてるのかと(笑)「僕かぁ山下組にいましたけど、「冷し中華」のころは小中学生です」と答えたら、国書刊行会の編集者が「それは存じ上げております」。で、ボリス・ヴィアンの「パタフィジーク協会」は日本の「全冷中」だと(笑い)。非常にインテリの考えそうなことを言って、その視点で書かないか、ということだったんですね。冗談ともハプニングともモダン・アートとも演芸ともつかない、一種の祭りのような学会活動は、戦後日本では「冷し中華」しかないんではないか。それが証拠に、彼らも「パタフィジーク大会」をしてるんですよ(笑)
山下:「冷し中華祭り」と同じだ。やっぱりやってるんだ(笑)
菊地:やってんですよ(笑)で、かなり乗り気になって、書くときは山下さんに話し聞こうと思ってたんですけど、本の企画自体が頓挫しているようなんですよ。いま『ユリイカ』読者で「全冷中」って言って意味がわかる人がどれぐらいいるか想像もつかないんですけど(笑)とにかく若い読者に全冷中の事を知らせたくて知らせたくて仕方がないです(笑)

国刊の企画、これが縁で再び軌道に乗って欲しいな。昨日「水声通信」のペレック特集を読んだので、意外な所から(全冷中だよ!)「パタフィジーク協会」が繋がる。そうだ、ヴィアンのサン=ジェルマン=デ=プレ入門も面白かった。
僕は最初に菊地成孔が関わったものを聞いたのは、ティポグラフィカのフローティングオペラが最初なんだけど、最初がいきなり解散盤てのも因果なもんだ。高校生の当時はただただ馬鹿テクっぷりに驚いてただけなんだけど、大谷能生の「90年代は、俺たちはずーっとリハだったわけ。」のティポグラフィカ分析を読むと、その僕を驚かせたところが、理論的な帰結だったことを今さらながらに知って、また驚く。
菊地×三田格のやりとりでどっちが国際弁護士湯浅に似てるかお互い言い合ってるけど、実は僕が一番似てるかもしれない。続きは明日